労働保険の手続・相談
労働保険は、労災保険と雇用保険から成り立っています。従業員を雇い入れたとき(退職したとき)は、すぐにご連絡ください。
労災保険
従業員を雇い入れたとき、事業主は労災保険(労働者災害補償保険)に加入する必要があります。これは、業務上または通勤途上で発生したケガ・病気に対する事業主の義務となります。強制加入ですので、手続をしないでケガ・病気や最悪の場合死亡となった場合、事業主が保険給付の全額を負担となることもありますので要注意です。実際にケガ・病気になったときは、以下の保険給付があります。
- 療養補償給付(療養給付)
- 休業補償給付(休業給付)
- 傷病補償給付(傷病給付)
- 障害補償給付(障害給付)
- 介護補償給付(介護給付)
- 遺族補償給付(遺族給付)
- 葬祭料(葬祭給付)
雇用保険
1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある従業員を雇い入れたとき、事業主は雇用保険に加入させる必要があります。従業員が退職した際の失業給付等、以下の保険給付があります。
- 失業給付
- 高年齢雇用継続給付
- 育児休業給付
- 介護休業給付
- 教育訓練給付
社会保険の手続・相談
社会保険は、健康保険と厚生年金保険から成り立っています。該当する従業員を雇い入れたとき(退職したとき)は、すぐにご連絡ください。役員報酬・給与の大幅なアップ・ダウン、賞与支給時も手続きが必要です。
健康保険
1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数の両方が、常時雇用者(正社員)の4分の3以上である従業員を雇い入れたとき、事業主は健康保険に加入させる必要があります。実際にケガ・病気になったときは、以下の保険給付があります。
- 療養の給付・家族療養費
- 入院時食事療養費・入院時生活療養費
- 保険外併用療養費
- 訪問看護療養費・家族訪問看護療養費
- 療養費
- 移送費・家族移送費
- 高額療養費・高額介護合算療養費
- 傷病手当金
- 出産育児一時金・家族出産育児一時金
- 出産手当金
- 埋葬料(費)・家族埋葬料
厚生年金保険
厚生年金保険の手続きは健康保険と同時に行うことがほとんどです。以下の年金給付があります。
- 老齢給付(高齢になったとき)
- 障害給付(障害があるとき)
- 遺族給付(死亡したとき)
給与計算
給与計算は、単なる四則計算ではありますが、最新の専門知識が必要です。簡単そうに見えて、社会保険のしくみや税金の知識がないと正確な給与計算ができませんので、外部委託をお勧めいたします。
- 給与計算は、毎月の期限つきの業務です。給与支払日が祝日や土日に重なったりした場合、多くの会社はその前日に支払います。当然のことながら、短い期間での計算となりますので、社内で給与計算を行っていた場合、他の業務にしわ寄せがきます。
- 給与計算には、雇用保険料、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料が必要となりますが、各保険料は年間一定額ではありません。当然のことながら、所得税も変わってきます。最新の法律に基づいて計算していないと、いつか社員から指摘されることにもなりかねません。
- 残業代は、正しい残業時間は当然のこと、正しい残業単価で計算していないと未払い残業代につながります。法定労働時間超、休日労働、深夜労働と単価が変わります。
就業規則の作成・変更
会社におけるルールを文書にしたものが就業規則です。別称「職場の憲法」ともいわれ、常時10人以上の従業員がいる会社は、就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。
- 現実的には、従業員を1人でも雇ったときに就業規則はあった方がよいといえます。勤務時間、給与支払日、給与計算、退職など、文書化していないと労使間の約束事があいまいになる可能性があります。あいまいさがお互いに不信感を生み、モラル低下につながることもあります。
- 就業規則には法律上必ず記載しなければいけない絶対的必要記載事項と、会社で制度を定めた場合に記載しなければいけない相対的必要記載事項があります。相対的必要記載事項の例として、懲戒制度が挙げられます。どのような場合にどのような懲戒処分をするのかをきちんと規定しておかないとその場面になったときに懲戒処分ができないということがあります。
- 就業規則を作成したら、従業員の過半数を代表する者の意見書を添付して、事業場を管轄する労働基準監督署長に届け出ます。これは、就業規則を変更したときも同様です。
- 労働基準監督署長に届け出た就業規則は、従業員に周知する必要があります。掲示したり、備え付けたり、配付したり、周知方法はさまざまですが、周知していないと、就業規則の効力が認められないことになりますので要注意です。
助成金の申請
従業員の採用や職場環境の改善をした場合、国から返済不要の助成金を受給することができます。事前に計画書を作成・提出する必要のある助成金も増えてきており、事前の準備を確認しておく必要があります。
- キャリアアップ助成金
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(正社員待遇を受けていない無期雇用労働者を含む。)の企業内でのキャリアアップを促進する取組を実施した事業主に対して助成をするものです。
・正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・健康診断制度コース
・賃金規定等共通化コース
・諸手当制度共通化コース
・選択的適用拡大導入時処遇改善コース
・短時間労働者労働時間延長コース
- 65歳超雇用推進助成金
65歳以降の定年延長や継続雇用制度の導入を行う企業等に対して助成するものであり、高年齢者の雇用の推進を図ることを目的としています。
・65歳超継続雇用促進コース
・高年齢者雇用環境整備支援コース
・高年齢者無期雇用転換コース
- 人材確保等支援助成金
魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を図る事業主に対して助成するものであり、魅力ある雇用創出を図ることにより、人材の確保・定着を目的としています。
・雇用管理制度助成コース
・介護福祉機器助成コース
・介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
・中小企業団体助成コース
・人事評価改善等助成コース
・設備改善等支援コース
・雇用管理制度助成コース(建設分野)
・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
- 障害者雇用安定助成金
雇用する障害者の職場定着を図るため、障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫を講じる事業主、特に職場定着に困難を抱える障害者に対して、ジョブコーチ計画に基づく支援を行う事業主、労働者の治療と仕事を両立させるための制度を導入する事業主及び障害者の雇入れに必要な事業所の施設・設備等の設置・整備を行う中小企業主に対して助成するものであり、障害者等の職場適応・職場定着及び一層の雇用促進を図ることを目的としています。
・障害者職場定着支援コース
・障害者職場適応援助コース
・障害や傷病治療と仕事の両立支援コース
・中小企業障害者多数雇用施設設置等コース
- 特定求職者雇用開発助成金
高年齢者や障害者などの就職が特に困難な者を、ハローワーク又は民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者等として雇い入れる事業主に対して助成するものであり、これらの方の雇用機会の増大及び雇用の安定を図ることを目的としています。
・特定就職困難者コース
・生涯現役コース
・被災者雇用開発コース
・発達障害者・難治姓疾患患者雇用開発コース
・三年以内既卒者等採用定着コース
・障害者初回雇用コース
・長期不安定雇用者雇用開発コース
・生活保護受給者等雇用開発コース
- トライアル雇用助成金
職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者を、ハローワーク又は民間の職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用する事業主に助成することにより、その適性や業務遂行可能性を見極め、求職者及び求人者の相互理解を促進すること等を通じて、これらの者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。
・一般トライアルコース
・障害者トライアルコース
・障害者短時間トライアルコース
・若年・女性建設労働者トライアルコース
- 両立支援等助成金
労働者の職業生活と家庭生活を両立させるための制度の導入や事業内保育施設の設置・運営、女性の活躍推進のための取組を行う事業主等に対して助成するものであり、仕事と家庭の両立支援、女性の活躍推進のための事業主の取組の促進を目的としています。
・出生時両立支援コース
・介護離職防止支援コース
・育児休業等支援コース
・再雇用者評価処遇コース
・女性活躍加速化コース
・事業所内保育施設コース
- 人材開発支援助成金
労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進するため、雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合等に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
・特定訓練コース
・一般訓練コース
・教育訓練休暇付与コース
・特別育成訓練コース
・建設労働者認定訓練コース
・建設労働者技能実習コース
・障害者職業能力開発コース
- 雇用調整助成金
景気の変動、産業構造の変化などの経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、休業、教育訓練、又は出向によって、その雇用する労働者の雇用の維持を図る事業主に対して助成するものであり、労働者の失業の予防や雇用の安定を図ることを目的としています。
人事制度
従業員が安心して定年まで働ける道筋を示したものが人事制度です。頑張れば給与がいくらになるのかをオープンにしたものといえます。
従業員の評価→給与が納得性のあるものであるかは、人が人を評価する上での永遠のテーマかもしれません。社内の職務調査を行って評価基準を作成し、さらに従業員をどのように評価・育成していくかをインタビューを行いながら構築していきます。
労務相談
労務管理に関する事業主からのご相談をお受けしております。さまざまな悩み等お気軽にご相談ください。
労働条件(労働時間、休日、賃金など)、退職・解雇などのトラブルについては、社内での解決が望ましいです。社内で解決することにより、就業規則・諸規程を変更し、働き易い職場に変わっていくからです。しかし、双方譲れないとのことから、裁判で決着した場合、後味が悪く、何らかのしこりを残すことになります。このようなことはできれば避けるべきことですから、法律・経験に基づいたアドバイスをさせていただきます。止むを得なく、裁判に進む場合は、弁護士のご紹介もいたします。